英語翻訳を自分でやるときのこつ 主語の見極め/受動態

こんにちは。翻訳者の石渡です。

この夏は、新規の翻訳のご依頼を沢山いただいたのと、高校受験生の姪の英語特訓を仰せつかり、7月はばたばたとしていました。

さて、現在私のところにご依頼いただくのはWebなどで公表する記事などが多いです。

英訳のご依頼が全体の六割程度と多いのですが、たまに自分で英訳するので校正チェックだけお願いね!というご依頼もあります。
第三者が客観的に読む作業を行うだけでさらにぐっと精度があがるのです。
なので、自分が翻訳と校正まで行う場合は、翻訳を終えて間に一日か二日くらい休みをいれることで、客観できるような環境を作ります。

苦手であれば餅は餅屋に頼むのは健全だけれど、もし自分で英訳する意欲があるならば、自分の言わんとするニュアンスを良く知るのは自分だから、それはベストだと思います。

そのときに、こうすると日本語に引っ張られず英語がより自然に訳せるかな?
というポイントは何だろう、と思ったときに、これが一番最初に思いつきました。

行為者がわかる受け身の文をできるだけ能動態に

たとえば この商品は、弊社で2016年に開発されました。という文があるとします。

直訳すると、

This product was developed by our company in 2016.

です。

でも、英語の文章では、誰がその行為をしたの?という部分がわかっているならば、できるだけ能動態の文で表すのが自然です。

 

なので、

弊社はこの商品を2016年に開発しました。
We developed this product in 2016.

という能動態の文にします。

日本語文化は、「おれが、わたしが」と自分を主語にして話すのを特に好まない謙虚な話し手が多いので、自分や自社を主語に持ってくるのを避ける傾向があります。けれど、こうした「誰が行ったか」はっきりとわかる場合は、英語では能動態が自然です。言葉が違えば文化も違います。なので、直訳ではなく、発想を転換してみましょう。
そうすることで、ぐっと自然な英語にちかづくし、何より文章がシンプルになって読みやすいです。
相手が読みやすければさらに相手に伝えたいことが伝わりやすくなります。
わたしが作ったの!わたしが、と書いても全然オラオラに聞こえないので安心して能動態を使ってください。^^

じゃあ、受動態っていつ使うの?

これを読んでいて、受動態っていつ使うの?って思った方。

受動態は、こんなことを説明する時が自然です。

1. いつ作られたかに焦点を当てて話す場合

この橋は1972年に建てられました。
This bridge was built in 1972.

という文章は、誰が作ったかよりも、1972年に建てられたという事実に焦点を当てている文章です。
英語では、すごくおおざっぱに言いますが基本的に、伝えたい情報から順番に、語順が並んでいます。なので、文の前に来る言葉ほど大切な情報だったりします。

なので、受動態の形を取り、橋を一番文の先頭に持ってきて、建てられた年を伝えているのです。
また、建築者もわかっていてる場合でも、

A)This bridge was built in 1972 by Yuki Ishiwata.
この橋は1972年にイシワタユキによって建てられた。

B)  Yuki Ishiwata built this bridge in 1972.
イシワタユキは1972年にこの橋を建てた。

と比べみると、Aの受動態の方が主語である橋の歴史っぽい。Bの能動態の方が主語の石渡の生涯の年表っぽい。

教科書だと、同じ意味だから言い換えて文を作れなんて書いていたかもしれませんが、いやいや、同じ事実を違うフィルターで伝えているのです。

2.どうやって/どんなスタイルで作られたかに焦点を当てている場合

この茶室は、数寄屋造で作られています。

This teahouse was built in the Sukiya style.

という場合。これもまた、作った人ではなく、どんなスタイルで作られたかを語りたい場合は、受動態が自然です。

3.どんな原料で/どこで作られているか焦点を当てている場合

このTシャツはオーガニックコットンで作られています。

This t-shirt is made from organic cotton.

このTシャツはインド製です。

This t-shirt was made in India.

上記のように、原産地、原料を伝える場合もやはり受動態です。

なんで受動態は過去形か進行形が多いのか?

さてここで。

受動態で、作られた/作られていますという文を書く時に、

is made

is built

という現在形で受動態の文を書くことが少ないことに気づいた人はいますか?

作る/建てるという動作は、作り終えるその瞬間まで、はっきりとくぎれる時間のスパンの中で起こる動作なので、終わったこと(過去形)か、今起きていること(現在進行形)で語られることが多いです。

建物を例にして見てみましょう。


This building was built in 1981.
このビルは1981年に建てられた。

この年に竣工してもう終わったことなので、過去形です。

Our new house is being built now.
私たちの新居は現在建設中です。

今建設中ですが、これも一定の期間で終了することなので、進行形を使います。

 

逆に受動態で現在形をとるものは、もっとゆるやかな時間の流れのなかで変わらない習慣や、事実などです。

I am so loved by everyone around me.
私ったら周りの皆さんに愛されてるんです。

愛は一晩寝て冷めたりしませんね。建築と違って、ずっとゆるやかというか終わりが見えないもの。こういう状態が続きます。
(愛の定義はつっこまないでね。)

This t-shirt is made of cotton.
このTシャツはコットンでできている。

これも、木綿でできているのは、Tシャツが新品でも着古してよれてきても変わらない事実。なので、現在形で表します。

 

 

知ることは、好きになることへの一歩

たんなる日本語の直訳を越えて、自然に伝えるための英語を身につけていくには

こうした文法的な背景を知っていくことも、すごく役にたちます。

この夏中三の受験生の姪の英語学習を間近で見ていて、文法を最低限わかったら、やはり単語などはある程度暗記が求められます。

けれど、やはり、背景をわかっているのは大事です。

だって!

わかれば楽しいじゃないですか?

本当にその一言なのです。

わかると楽しいです。

そして、ちゃんと丁寧にひもとけば、みんなこの楽しさを味わえると思うのです。

翻訳も、教えることも、言葉の奥深さ、面白さを伝える手伝いをできたらいいなあ。

そんな風にますます思うこの夏なのでした。